2020年7月5日

2020年7月5日 令和2年度税制改正解説 第5回 『ひとり親控除の創設及び寡婦控除の見直し』

こんにちは。税理士の山下です。


本日から所得税の改正について解説を致します。

はじめは所得控除の見直しについてです。


「寡婦(夫)控除」という所得控除制度が従来からありました。これは、配偶者と死別又は離婚した場合に、一定の要件を満たすことで 27万円(特別の寡婦の場合は35万円)の所得控除が受けられるという制度でした。

この「寡婦(夫)控除」につき、令和2年分以後の所得税については改正が行われております。


紛らわしくなるので、改正前の要件を詳しく記載することは控えますが、ポイントとなる項目だけ改正前の要件を列挙致します。


①まず、従来は「寡婦」と「寡夫」の用語が用いられており、上記「特別の寡婦」は「寡婦」のみであり、「寡夫」にはそもそも所得控除の優遇措置は取られておりませんでした。

特別の寡婦には、寡婦のうち夫と死別(生死が不明な場合も含む。)又は離婚後婚姻をしておらず、扶養親族である子がいる場合で、合計所得金額が500万円の者が所得控除35万円を受けられる制度でした。

通常の寡婦控除は、所得要件がなく総所得金額等が38万円以下で扶養親族その他生計を一にする子がいる場合に所得控除27万円が受けられておりました。


②続きまして「寡夫控除」ですが、寡婦の場合も妻と死別(生死不明の場合を含む。)又は離婚後、婚姻をしておらず、総所得金額等が38万円以下で生計を一にする子があり、なおかつその寡婦の合計所得金額が500万円以下の場合に、所得控除27万円が受けられる制度でした。


お読み頂いていかがでしょうか?ここには2つの不公平があるということで今回の改正に至ったわけです。

1つ目の不公平ですが、寡婦でも寡夫でも、「配偶者との死別又は離婚」が要件となっております。

つまり、これまで婚姻をしたことがない場合は、寡婦(夫)控除そのものの対象にすらならなかったということです。

いわゆる婚姻歴のないシングルマザーなどは、所得控除が受けられなかったわけです。


2つ目の不公平ですが、「寡婦」と「寡夫」で要件が異なっており、さらに「寡夫」には所得控除の優遇措置がないことが読み取れます。要するに男女間の不公平ですね。男性のひとり親でも生活が困窮している者は少なからずいるはずです。これらの不公平を以下のように緩和させるための措置がとられました。


まず、寡婦の定義について見直されております。従来の寡婦(夫)控除から寡夫を除外しました(え!?さらに差別が広がってない?と思われるかもしれませんが、ご安心ください。)。

寡婦とは、

①夫と離婚した後婚姻していない者のうち、扶養親族を有すること、合計所得金額が500万円以下であること、事実上婚姻関係と同様な事情にあると認められる者がいないこと(この点は厳しくなりましたね。)

②夫と死別した後婚姻を指定ない者又は夫の生死が明らかでない者で一定の者のうち、合計所得金額が500万円以下であること、事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる者がいないこと

と定義されました。

寡婦控除自体は27万円の所得控除に統一されております(え!?35万円控除はもうないの?と思われた方もご安心ください。)。


そして、上記寡婦控除とは別に、「ひとり親控除」が創設されました。

「ひとり親」の定義は次のようになっております。


ひとり親について、現に婚姻指定ない者又は配偶者の生死が明らかでない者で一定の者のうち、次に掲げる要件を満たすもの。

①その者と生計を一にする子(総所得金額等の合計額が48万円以下であるものに限る)を有すること

②合計所得金額が500万円以下であること

③事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる者がいないこと


この定義から読み取れることは、どこにも「婦」や「夫」という文言がない、つまり、男女間の差別はないということです。男性の場合でも受けられるということです。ですので、「寡夫」は寡婦控除から除外はされたと言いましたが、新たな制度の対象になるのです。

また、「現に婚姻指定ない者」とあるように、婚姻歴がここでは問われておりません。「寡」という文字がどこにも見当たりません。「寡」という字には「つれあいをなくす」という意味があるのですが、そもそも婚姻をしたことがなくても働いていない子がいて、合計所得金額が500万円以下であり、事実上婚姻していると認められる人がいなければ、これからは所得控除が受けられるようになりました。


しかも、ひとり親控除の所得控除額は一律35万円です。ですので、従来男である限り受けられることのできなかった所得控除35万円が、男女の差別なく受けられるようになり、さらに婚姻歴のない者であっても同じく所得控除が受けられるようになりました。


経理の方々、こういった改正が入っておりますので、毎月の給与計算の際、源泉徴収にはお気を付け願います。今年の年末調整でも再チェックが必要ですね。


本日はこのへんで。